自衛隊のメリットとして衣食住がタダという宣伝がされています。
私も衣食住がタダというメリットに惹かれた一人です。
しかし、実際に入隊して自衛隊の現実を目の当たりにすると
衣食住がタダというのは「ウソ」であることがわかりました。
実際には「一部タダになることがある」というのが正しいでしょう。
幹部自衛官は「タダ」の恩恵を受けることが少なく「自腹」を切ることが大半
むしろ、幹部になると自腹を切る必要性が増えます。
「ここまで自腹を切らないといけないのか!」とビックリした体験をまとめてみました。
「衣」について
衣類が無料じゃない
「衣」には莫大なお金がかかりました。
自衛隊には「楽をしたけりゃ金をかけろ」という格言があります。
基本的な戦闘服(自衛官がいつも着用している迷彩服)や制服は靴から帽子まで一式支給されます。
また、弾納や弾帯、サスペンダー、水筒、携帯シャベルなどの戦闘装着セットも支給されます。
一応、OD色の半袖のTシャツも数枚支給されます。
自衛官は国からの支給品を「官品」と言います。
ここまで聞くと全部支給されるじゃないか!と思うかもしれません。
しかし、支給される官品が「使い物になれば」の話です。
ODシャツに関しても支給品では全然足らないので自費購入します。
値段はピンキリですが安くはありません。
また、戦闘装着セットについては悲惨でほとんど使い物になりません。
いまだに1970年代ぐらいの個人装備で装着するだけで鬱陶しい代物です。
私は一切、官品を使っていませんでした。
これは幹部としてあるまじき行為です。
基本的に幹部は国から支給された官品を身に着け、部下にも官品を使用するよう指導します。
しかし、クソの役にも立たない官品を使って戦場で死ぬなら
誰になんと言われようと自分が納得した私物の装備を身に着けて死んだ方がマシ
と考え部下にも私物の使用を認めていました。
本物の戦闘用品はとても高い
アークテリクスから発売されているニーパット(膝を保護する装備)は12000円ほど。
チェストリグと呼ばれる装備は30000円以上
寝袋も官品では使い物にならずほとんどの人が自費で購入していました。
個人装備だけで20万円以上使いました。
私のように官品を一切使わない人は珍しいかもしれませんが、
大なり小なり自腹を切らないと官品のみではやっていけません。
まれに全身官品マンがいますが彼らは自衛官の中でも特別に訓練された存在です。
官品を使わない理由
官品を無くすと「捜索」という地獄が待っています。
見つかるまで永遠に演習場の隅から隅まで探します。
見つからないことはありません。見つけるのです。
「捜索」を嫌がって自衛官は官品を使いたがりません。
モノを無くすと不毛な「捜索」が待っているというのも自費購入を助長している部分があります。
支給された官品はロッカーの中で綺麗にしまってあることもしばしば。
幹部の自腹事情
幹部自衛官特有の自腹事情として
ベレー帽と礼服用階級章(通称わらじ)は自腹で購入しなければなりません。
ベレー帽は5~6000円
わらじは8000円近くしたと思います。
しかも、わらじは尉官用、佐官用、将官用に分かれています。
3等陸尉(少尉)の時に尉官用を購入します。
また、1等陸尉(大尉)から3等陸佐(少佐)に昇進したら佐官用のわらじを購入しなければなりません。
ハッキリ言って違いがパッと見わかりません。
尉官は編みが2本、佐官は編みが3本だそうです。
わらじはマジで高すぎて買い渋ります。
常に使うならまだいいのですが、年に数回しか使わないので複雑な心境です。
使用頻度は少ないですが必ず使うものなので支給して欲しいです。
入札制度が邪魔をしているのか
日本には優れた企業がたくさんあります。
ファイントラック
モンベル
ナンガ
高品質で優れた会社があるにも関わらず、一番必要としている自衛官に届いていません。
装備品等は一般的に防衛装備庁が競争入札により落札した業者と契約を結びます。
軍事においてこの入札制度は如何なものか?と考えています。
誰でも公平に入札に参加できるのは良いかもしれません。
国が示した基準に適合した物を納入していますが、安かろう悪かろうになってしまいます。
国が主導して高品質な装備品を作ってくれる会社と契約を結ぶべきだと思います。
それが独占的であっても自衛官が必要していれば良いと思います。
むしろ国営企業として武器や弾薬などは製造できるように保護するべきです。
まとめ
ドーランや脱落防止の紐、耳栓など細かい物品に必ずお金がかかり自腹を切らないとやっていけません。
お金をかけないで全身官品マンになることも可能だがその道は険しい。。。
憲法9条の改憲には賛成ですが、ミクロな視点での抜本的な改革も必要だと思います。
改憲と同時に隊員の地位向上と不遇の改善を願うばかりです。
コメント